My Own Private PENDLETON vol.17
ペンドルトンが彩る日常 vol.17:川村和生さん(Inspire代表)
創業以来、160年以上にわたりアメリカを代表するライフスタイル・ブランドとしてそのルーツであるインディジネス・ピープルズ(ネイティブ・アメリカン)はもちろん、アメリカならではの古くて新しいオーガニックな暮らしを彩ってきた<PENDLETON>。「My Own Private PENDLETON」では、そんな日常を編みながら未来へと続くカルチャーを形創る方々をご紹介します。第17回は、カルチャー色の濃い独自の審美眼でファッション関係者を中心に高い支持を受けるインポーターの川村和生さんを訪ね、生地屋としての<PENDLETON>の物語を紡ぎます。

City Lights Bookstore、クラフト、好きの延長線上
――川村さんがオーナーを務める東京・中目黒のショップ<Inspire Tokyo>には、1950年代のビートニクスたちの拠点として知られるサンフランシスコの書店<City Lights Bookstore>の版権を使用したオリジナル企画の商品や、<PENDLETON>を含む古着やオリジナルのアパレル、中南米のクラフトなど、物語を感じる商品が多く揃っていて、お伺いする度にワクワクしております。
川村さんは18歳の時にLAに留学し、学生時代からフリーのバイヤーとしてヴィンテージのアイテムなどを日本に輸出していたそうですが、帰国後すぐにお店を始めたのでしょうか?
川村和生(以下「川村」):2002年の帰国後に<Inspire>という輸入代理店を設立して、それ以来ずっとインポート・ホールセール、卸業が中心です。かれこれ、もう四半世紀近くになりますね。
こうやってしっかりとお店を始めたのもコロナが明けたくらいからで、それまでは週末だけとか。<City Lights Bookstore>などの版権ものや、自分で商品企画をしてアメリカの工場で生産したものや買い付けたもの、メキシコなどで買い付けたものなどを輸入して卸すというのがメインで、古着は本当に趣味の範囲内でという感じです。
――そうだったのですね。それにしても品揃えが、いわゆるファッション的なものではなく、カルチャーと深く結びついたようなものが多いですよね。
川村:かなり捻くれているかもです(笑)。単純にトレンドを追いかけるようなことだと、やっぱり大きいところには絶対叶わないし、自分の好きなものの延長線上に<PENDLETON>があったりとか、ネイティブ・アメリカンなどのクラフト的なものがあったり、<City Lights Bookstore>のようなものがあったりという感じですね。
お気に入りだというウエスタン仕様のウールシャツ。USメイドで、古着市場でもまだ比較的安く見つかるそう。
サンフランシスコ、トラッド、半袖のボードシャツ
――<PENDLETON>との出会いは、それこそ留学時代のアメリカだったのでしょうか?
川村:まだ日本にいた頃から、古着屋さんで買ったりしていました。それこそ中学生くらいの頃で、<PENDLETON>は大人のブランドなイメージだったんですよ、その当時。ちょっとチクチクしたり、タグにXLって書いているのに縮んでいてやたらと小さかったりするものも多かったのはご愛嬌として(笑)。
それが18歳の時にアメリカに行って、サンフランシスコでそのイメージがガラッと変わったんです。
――因みに、サーフな感じですか?
川村:いえ、トラッドですね。サンフランシスコのダウンタウン、ユニオン・スクエアの辺りに<Cable Car Clothiers>っていう、すごくトラディショナルな品揃えのお店があったんですよ。そこで現行品の<PENDLETON>のシャツを見て。
既に<City Lights Bookstore>の仕事もしていたので、同じくノースビーチのほうにある<Old Vogue>というヴィンテージ・ショップがあって、そこで古い<PENDLETON>のシャツを手に入れたんですけど、サンフランシスコ特有の気候にウールシャツは合うなと思って。実際にそんな環境下で着てみると、<PENDLETON>ペンドルトンのイメージがぐっと自分の中で変わっていったんです。
だから僕にとって<PENDLETON>は、ポートランドというよりサンフランシスコなイメージ。それがより強くなったのが半袖のボードシャツで、かなり衝撃的でした。
まさにカリフォルニアのビーチな感じ。夏は暑いけどけっこう夜は肌寒かったりするので、ロンTの上から重ねるとか、なんとなくベスト感覚で着ていました。日本の都市部の気候だと少し取り入れづらいかもしれませんが、避暑地みたいなところだとちょうどよいかもしれませんね。
僕にとって<PENDLETON>は、ポートランドというよりサンフランシスコなイメージ。それがより強くなったのが半袖のボードシャツで、かなり衝撃的でした

<PENDLETON>本社で購入した、ブランケットより少し薄目の生地
ポートランド、生地、woolen mills
――ボードシャツと並ぶ<PENDLETON>のシグネチャーである、ネイティブ・アメリカン柄のブランケットなども、日本にいる頃からご存知でしたか?
川村:ブランケットなどは、アメリカに行ってからですね。そう言えば、ブランケットではないんですけど、昔ポートランドに行った時にぶらぶら町を散歩していたら、たまたま通りかかった少し年配の女性が、ブランケットなどでよくみるようなパターンのガウンというか、ジャケットなのかな?を着ていたんですよ。
「素敵な服ですね。どこで買ったんですか?」と訊ねたら、「そこのお店で生地を買って、自分で仕立てたのよ」と教えてくれて、なんかとても素敵だなと思いました。ブランケットよりは少し薄目の生地だったんですけど、めちゃくちゃ格好良かった。
たぶん<PENDLETON>の本社に隣接するショップだったと思うんですけど、行ってみたらたくさんの生地があって、メーター単位で計り売りしていたのでいくつか購入して、1940年代からシアトルやオレゴンのスタイルとして知られていたウール・ジャケットなどをモチーフに自分でもオリジナルのアイテムを作ってみたらいい仕上がりになったので、その後販売したりもしていました。もちろん、<PENDLETON>製とは謳えないですけど、誰がみてもそうだとわかるような仕上がりで、やはりそこは<PENDLETON>のパターンが持つオリジナリティの為せる技だなと感じましたね。
――今でもアメリカの本社では、生地での販売を続けています。
川村:それこそ、社名に「woolen mills(ウーレン・ミルズ)=毛織物工場」という名を冠し続ける所以で、生地屋としてのプライドを感じますよね。ネイティブ柄の他にも無地やチェック、それこそブラックウォッチなど色々と揃っていて、その時購入した生地自体がこれです。当時製作したサンプルが今日手元にあればよかったんですけど、あれは我ながらなかなかの出来でした。
社名に「woolen mills(ウーレン・ミルズ)=毛織物工場」という名を冠し続ける所以で、生地屋としてのプライドを感じます

<PENDLETON>の生地で作ったオリジナルのテディベア
ヴィンテージ、トレーディング・ブランケット、新たなカルチャー
――それこそ<PENDLETON>はサーフやさまざまな音楽と結び付き、そこに紐づくカルチャーを形創ってきましたが、最近だと特にどんなカルチャーと結びついているような印象をお持ちですか? 川村さんは現在も定期的に買い付け等で頻繁にアメリカに滞在されていますが、現地ではどんな方々に好まれているのでしょうか?
川村:音楽やファッションしかり、現在は丸っと時代が回ってフラットになっているような状況で、何か特別なカルチャーシーンと結びついているとかという感じではまだないのかもしれませんが、アメリカも今はヴィンテージ・ブームで、若い子たちがよく着ている印象がありますね。元々コンサバなブランドではあるので、そんな背景をリミックスして少しこれみよがしな感じで、明らかにちょっと古そうなアイテムを取り入れていたり。
――日本でも古着やヴィンテージ・ブームが続いていますが、アメリカもそうなのですね。
川村:今回の渡米時、ニューメキシコの方にも行ったのですが、まだ根強くトレーディング・ブランケットの文化が残っているので、やはり圧倒的に交易品の色が強い。ネイティブ・アメリカンたちが様々な産物とブランケットを交換したりしているのですが、今でもその文化が続いているんです。
馬の鞍に掛けて使うこのホースブランケットは、20年くらい前に買ったものなんですけど、今でもその用途で使われ続けていて。ムチャチョとも呼ばれているんですけど、ネイティブ・アメリカン以外にはベビーブランケットとしても広く使われていて、日本で日常使いするのにもちょうどいいんですよね、このサイズ感が。
きっかけはどうであれ、そんなブランドの背景を含め改めて若い層にも受け継がれていきながら、その時々の音楽や文学、その他のシーンと結びついていくことで、また新たなカルチャーが形創られていくのだと思います。
取材当日着用していた<VANS>のシンジケートは、プロスケーターのジョン・カーディエルと<PENDLETON>のトリプル・コラボレートで、2008年にアメリカ国内の<VANS>ショップのみで限定発売された、非常にレアな逸品
<プロフィール>
川村和生
かわむら・かずお / 東京・中目黒を拠点に輸入代理店・アパレル等の生産企画を展開する有限会社インスパイア代表取締役。90年代をアメリカで過ごした経験を背景に、“ディープ・カリフォルニア”のカルチャーやメキシコのアート・クラフトを日本に紹介し続けるインポーターであり、モノ作りのキーパーソンとして活躍を続ける。
Inspire Official Site
Instagram
<スタッフクレジット>
photography:Ai Iwane
text:K2
edit:Sohei Oshiro(Chiasma)
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