My Own Private PENDLETON vol.2
ペンドルトンが彩る日常 vol.2:本間良二さん スタイリスト/ BROWN by 2-tacs)
創業以来、160年以上にわたりアメリカを代表するライフスタイル・ブランドとしてそのルーツであるインディジネス・ピープルズ(ネイティブ・アメリカン)はもちろん、アメリカならではの古くて新しいオーガニックな暮らしを彩ってきた<PENDLETON>。新連載「My Own Private PENDLETON」では、そんな日常を編みながら未来へと続くカルチャーを形創る方々をご紹介します。第二回目はオリジナルブランド<BROWN by 2-tacs>を主宰するスタイリストの本間良二さんと愛犬・七男(ななお)の散歩にお邪魔し、ウールとチェック、そして心地よさにまつわる物語を紡いできました。
古着屋、ウールシャツ、チェック
――<PENDLETON>とは、どのように出会ったのでしょうか?
本間良二(以下「本間」):<PENDLETON>といえばブランケットというイメージを持つ人が多いかもしれないけれど、僕の中ではウール製のシャツの方が馴染み深いですね。初めて買ったのは中学生の頃、お金がなくて新品はとても買えなかったから古着屋さんで。当時は4,800円くらいで売られていたウールシャツをよく買っていました。それでもやっぱり高かった(笑)!
だいたい<ラルフローレン>のオックスフォードシャツとかと一緒に並んでいて、そちらは渋カジの先輩が着ているイメージがあった。僕はもっとアメカジ寄りのヘビーデューティな感じや、その頃からやっぱりチェックの柄自体が好きで<PENDLETON>をよく着ていて、以来ずっと愛用し続けています。
それこそ今でも古着屋さんでの予期せぬ出会いから家に持ち帰ることがほとんどなのですが、<PENDLETON>のチェックってものすごくバリエーションがありますよね。定番でも年代に応じて微妙な変化があったりして。
自分も<BROWN by 2-tacs>というブランドでチェック柄のシャツを作ったりしているので参考にさせてもらうことも多く、<PENDLETON>のチェックは本当に丁寧に織られていて、いつか機会があれば本社に伺いチェック柄のアーカイブを見させてもらえたらと思っているくらいです。
ところで、<PENDLETON>のシャツは今でもアメリカ生産されているんですか?

生地、責任感、お直し
――数件にまで減ってしまったアメリカにある毛織物工場のうち本社のあるオレゴン州ペンドルトンの工場を含む二つの工場を<PENDLETON>は所有・運営し続けているのですが、ブランケットと同様にウール製品は素材から生地の生産、それに仕上げまですべてアメリカ国内で行い続けています(詳しくはこちらのリンクをご参照ください)。是非本社にもいらっしゃっていただけたらと思います。
<BROWN by 2-tacs>のシャツと言えばチェック柄というくらい、さまざまなバリエーションがあり、本間さんは本当にチェックがお好きなんだなといつも思っておりました。生地も、オリジナルで開発されているものが多いのですよね?
本間:そうですね、シャツ以外にも生地を開発していて、6〜7割くらいがオリジナルです。チェックのパターンも機屋のシュミレーターさんに実現性などを相談しながら自分でデザインするんですけど、とても楽しい。
それにしても、アメリカでの生産を100年以上続けているって、とてもすごいことだと思います。古着のリメイクなどから始まった<2-tacs>から数えると、自分のブランドも立ち上げてから20年以上になるのですが、続けるって本当に大変ですよね。
僕自身、手に入れたものに対する責任感みたいなものを強く感じていて、それをひとつの基準にしているので、素材からこだわりクラフト的にしっかりと作られたモノは、やっぱり長く大切にしていきたいと思うし、自分がデザインしたモノもそうなっていったらいいなと思います。
<PENDLETON>のシャツを含め僕は古着や古物でモノを買うことも多く、経年変化によって、ダメージや生地によっては虫穴があることもたまにあるんですけど、それも直して着る。ウール製品の補修でアメリカやイギリスなどでもよく用いられているダーニングやフェルティングという手法を用いて自分で繕いながら、<PENDLETON>のシャツも着続けたりしています。
「素材からこだわりクラフト的にしっかりと作られたモノは、やっぱり長く大切にしていきたいと思うし、自分がデザインしたモノもそうなっていったらいいなと思います」
サー・ペンドルトン、山登り、レイ・ジャーディン
――まさに「本間さんのモノ」になっていて、補修されたところも含めてとても素敵ですね。そもそも<PENDLETON>のシャツはとても丈夫に作られているので、それこそ何人かのオーナーの手を経て、それぞれがそれぞれの用途でしっかりと着込まれたであろう半世紀くらい前に作られたヴィンテージを、古着屋さんで見かけることもよくあります。
本間さんご自身としても、中学生時代に古着として出会った<PENDLETON>のウールシャツが、時間を経て当初とは違った形で日常に取り入れられているようなことはあったりするのでしょうか?
本間:それこそ最初は街中でのファッション用途から自分の暮らしの中に入ってきたのですが、着慣れたその質感を本来の目的だった自然の中での行いや作業などでも使って行きたいと思うようになっていきました。
実際に昔から山登りが好きで、せっかく行くなら天然素材を身に付けていきたいと思って色々と試してみたんですけど、例えば「ボードシャツ(=Board Shirt)」とか謂わゆるフランネル(紡毛 / ぼうもう)と呼ばれるようなヘビーデューティーな素材のウールシャツは、あまり向いていなかった。
ウールには主に紡毛と梳毛(そもう、ウーステッド)の二種類の加工方法があって(詳しくはこちらをご参照くださいhttps://pendleton.jp/blogs/feature/vol-6-a-century-of-shirt-making)、梳毛素材の「サー・ペンドルトン(=Sir Pendleton)」ラインのシャツは、ハイキングや山登りのインナー・レイヤーとしてとてもフィットしたんです。
梳毛の糸はとてもきつく紡がれていて、その後に軽くて耐久性のある生地に織り込まれるから、軽くて手触りも滑らかだし、通気性もあって比較的乾きやすい。<BROWN by 2-tacs>では更にナイロンを12%追加した速乾性の高いオリジナルの生地を作っていますが、そのアイデア・ソースの主軸は「サー・ペンドルトン」でした。
そういえば特にここ10年くらい、山小屋に行くとアウトドア・ブランドのファッションショーみたいになっているのにあまり馴染めなくて。UL(=Ultra Light Hiking / ウルトラ・ライトハイキング)の開祖と言われているレイ・ジャーディンが30年くらい前に『Beyond Backpacking』という本で「(ロゴマークを貼り付けている)デカールを外そう」と書いていて実際にその外し方まで紹介しているんですけど、なんか面白いなと思って、山を歩く時にはできるだけ天然素材を身につけることと共にブランドのロゴをできるだけ排することも心掛けています(笑)。
この日もチルデン・セーターの下には「サー・ペンドルトン」のシャツを着用。
動く山、留まる山、着古してからの心地よさ
――確かに昔ながらの定番など、クラシックなアウトドア用品には各商品自体の形状や素材で違いが分かるものが多くて、目立つ形でロゴマークは入っていないかも知れないです。とても興味深い試みですね(笑)。
本間さんは、7年ほど前から丹沢(神奈川県)の山奥にある家と東京の家を行き来する暮らしを始めていますが、山に登りに行くのではなく、山の中で暮らすようにもなって、何か変わってきたことはありますか?
本間:山の一日は短いし、季節によって日の長さが大きく変わってくるから、否応なくそれに応じたリズムで暮らすことになってくる。今は獣害などでかなり縮小しているけど畑をやっていたり、庭の手入れや山での暮らしに必要なモノを自分で作ったり、木工をしたりとか、今ではすっかり日常として馴染んできた部分もありますが、山の家で暮らすようになってしばらくしてから犬も飼い始めたので、やっぱり変化だらけではありますね。
山には山登りのような「動く山」と、家の周りなど暮らしの一環としての「留まる山」があって、外で日々の軽い山仕事や工房で作業したりする後者の方では「ボードシャツ」とか改めてフランネル素材のシャツをよく着るようになった。やっぱり強度が違うから。
改めてウールは凄いなと思うのが、羊の種類や糸の紡ぎ方、織り方で全然その特性が変わってくる。「動く山」と「留まる山」のような用途の違いって多かれ少なかれ都市での暮らしの中でもあるわけで、僕は今でも半分は東京で暮らし続けているんですけど、外延的な部分よりも心地よさを感じられるような素材にこだわりながら、自分のワードローブに加えたいと思えるシェイプで長く着続けられる、そして着古した時にこそ良さがわかるようなモノを作ることを、より意識するようになってきたと思います。
「山登りが好きで、せっかくなら天然素材を身に付けていきたいと思って色々と試してみたんですけど、梳毛素材の『サー・ペンドルトン」のシャツは、インナー・レイヤーとしてとてもフィットしたんです」
体力有り余る七男(ななお)との快適なお散歩時のインナーにも、「サー・ペンドルトン」はちょうどいい。
七男、直感、タコス
――昔から続けているサーフィンも、ULや山暮らしにしても直感的にやってみたいと思ったコトをすぐに行動に移し、実際にやってみてまずは自分の暮らしの一部にして、自分や家族、仲間たちが日常をもっと楽しんでいくために必要なモノやコト、場を作りながら、しかも自然と都市、オンとオフみたいな既成概念に囚われた境界線を持たずに、本間さんならではのウィットを利かせつつ、自然体で軽やかに行き来しているように感じます。
二拠点での暮らしにもだいぶ慣れてきて、最近、直感をくすぐるようなコトは何かあったりしますか?
本間:それこそ東京にきても週2回くらいは代々木公園に散歩に連れてきたり、最近は七男が中心の生活ですけどね(笑)。
直感かどうかはわからないですけど、ここのところ妙にタコスにハマっていてよく作っています。農業をしてみてその大変さがわかったので生地を作るまでは至ってないのですが、小さめのちょうど良い既製品(ナショナル物産(株)で良いのを発見!)をみつけました。肉具材は煮込み系が中心で、インドで買ってきた、これまたちょうどいい雪平鍋くらいのサイズの圧力鍋を使って、牛を入れたり、なくなると豚を足してみたり、次は鶏とか…すべての油が混ざり合って、鍋の中がもはや鰻屋の秘伝のタレのような状態になっているんですけど、これがもうどうしようもなく美味しく仕上がっております(笑)。それにトマト缶(コストコで良いのを発見!)や玉葱、パクチーを乗せてジャンクにテキトーにパクパク食べています。
それこそ圧力鍋やタッパーに入れた玉ねぎパクチーやトマト缶を東京でも丹沢でも持ち歩いて、軽やかに行き来していますよ(笑)。
――秘伝のタコス! それにしても、流石に本間さんらしい外延的ではなく内包的なこだわりですね(笑)。

忠犬見習いの七男(ななお)。
profile
本間良二
ほんま・りょうじ / 1975年東京生まれ。スタイリストとして活動すると共に、1998年に古着の再生をテーマにしたブランド<2-tacs>をスタート。2007年、中目黒に「The Fhont Shop」をオープン、翌年にはオリジナルブランド<BROWN by 2-tacs>を立ち上げる。2018年には丹沢の山林を入手し、東京と二拠点を軽やかに行き来しながら、新たに家族に加わった愛犬・七男(ななお)を交えてのにぎやかな毎日を送っている。
<BROWN by 2-tacs> / The Fhont Shop
photography:Katsuhide Morimoto
text:K2(SHATEKI Inc.)
edit:Sohei Oshiro(CHIASMA)