A Century of Shirt-Making
vol.2:生地、ディテール
ワークシャツを色鮮やかに刷新し、ブランケットと共に<PENDLETON>の重要なアイデンティティであり続けるシャツは、2024年に誕生100周年を迎えました。第二回目となる今回は、ライフスタイルを彩りながら時々のアメリカン・カルチャーを形作ってきた<PENDLETON>のシャツの生地やディテールについての物語をお届けします。
フランネルorウーステッド:生地の秘密
Woolen Flannel / フランネル
私たちのUmatilla® Wool(=ウマティラ®ウール)を使用して作られたシャツは、しばしば「フランネル」と呼ばれます。ウールのフランネルは、綿のフランネルよりも軽く、毛羽立ちが少ないですが、どちらもソフトなブラシのような手触りがあります。この100%ウールの生地は、オレゴン州ペンドルトンにあるウマティラ郡の工場を含むアメリカの羊牧場から調達された羊毛から織られています。「ボードシャツ(=Board Shirt)」にはこの生地が使われており、「ファイヤーサイド(=Fireside Shirt)」「ロッジ(=Lodge Shirt)」「トレイル(=Trail Shirt)」「キャニオンシャツ(=Canyon Shirt)」などこれまでラインナップされてきたモデルにもUmatilla® Woolが使用されています。
Worsted Wool / ウーステッド・ウール
それに対し、動物性繊維を平行に引き揃え、短い毛や不純物を除去してから撚るコーミング加工を施したウーステッド(=梳毛)・ウール糸を用いたウーステッド・ウールシャツは、AirLoom® Merino(=エアルーム®メリノ)またはそのバリエーション(例えばAirLoom® Merino Twill=エアルーム®メリノツイル)で作られています。ウーステッド・メリノウールの糸は非常にきつく紡がれ、その後軽量で耐久性のある生地に織り込まれ、滑らかな手触りと優れたドレープ性を持ちます。その重量と通気性により、四季を通じて着用することができます。ウーステッド・ウールで最も長く愛されている<PENDLETON>スタイルの象徴が、1955年に登場した「サー・ペンドルトン(=Sir Pendleton Shirt)」です。因みに各サー・ペンドルトンシャツには、約1マイルのウーステッド・ウール糸が使われています。
01:スプレッドカラーのシャツを着た女性用シャツの広告ビジュアル(1948年) 02:「スポーツシャツ(発売開始当時の「ボードシャツ」の呼称)」のイラスト(1953年) 03:スプレッドカラーの「メレディスウールシャツ」 04:ボタンダウンの「サー・ペンドルトン」 05 スレッドループ付きのスポーツカラー・スタイルの「ボードシャツ」 06:同スタイルの隠しトップボタンを留めた「ボードシャツ」
Lesson 1,2,3:All about Collars
シャツの襟は、基本的に「襟台」「襟羽開き」(上部のボタンが付いている部分)、そして襟の折り返し部分である「襟羽」の3つのパーツから構成されています。襟羽の尖端部分は「カラーポイント=襟先、剣先」と呼ばれ、年代や国ごとに多くの形状や長さのものが作られることで、様々なスタイルを生み出してきました。<PENDLETON>のシャツのカラーポイントも時代に合わせて変遷を重ね、現在のスタイルが確立されていったのですが、その中から代表的な3つのスタイルをご紹介します。
Spread / スプレッド
最もスタンダードなスタイルであり多くのバリエーションがありますが、<PENDLETON>のスプレッドはとてもシンプルな形状です。「ロッジ」「トレイル」「キャニオン」「メレディスウールシャツ(=Meredith Wool Shirt)」で取り入れられています。
Button Down / ボタンダウン
基本的にはスプレッドと同じ形状ですが、ポイントに小さなボタンホールが付いています。1800年代にイギリスのポロ選手がプレー中に競技の邪魔にならないように襟を胴体と固定するために生まれたスタイルです。ポロ競技を観戦したシャツ職人で< BROOKS BROTHERS>の創業者の孫であるジョン・E・ブルックスがこのアイデアをアメリカに持ち帰りました。私たちはクラシックな「サー・ペンドルトン」や「ファイヤーサイド」にこのスタイルを採用しています。
Sport / スポーツ
よりカジュアルなシャツで多く見られる、開襟スタイルです。<PENDLETON>では、クラシックな「グアヤベラ(=Guayabera)」のような夏もののスポーツシャツなどに採用され、最も人気のある「オリジナルボードシャツ®=Original Board Shirt」にもスポーツ・タイプのバージョンをラインナップしています。隠しトップボタンが付いており、状況に応じて上部までボタンを閉めることも可能です。
上段左から右へ:オープンポケット、ボタン付きポケット、フラップポケット、スナップ付きフラップポケット、ボタン&プリーツ付きフラップポケット
下段左写真:マッチポケット、右写真:バイアスカット・ポケット
Lesson 1,2,3:All about Pockets
ほとんどの<PENDLETON>のシャツには、胸にパッチポケットが縫い付けられており、そこには多くのこだわりが込められています。ここでは、いくつかのバリエーションをご紹介します。
Open Pocket / オープン・ポケット
「ロッジ」などに取り入れられている、上部が開いているシンプルなパッチポケットです。ビジネス / カジュアル仕様の「サー・ペンドルトン 」でも採用されており、さりげなくペンや眼鏡を収納するのに重宝します。
Button-Through Pocket / ボタン付きポケット
「トレイル」などで採用しているボタン付きのオープンパッチポケットで、セキュリティを確保するのに適しています。
Flap Pocket / フラップ・ポケット
ポケットの開口部を覆うフラップ(蓋)が付いており、「オリジナルボードシャツ®」などで取り入れられているシンプルなフラップ、「キャニオン」などのスナップ付きフラップや「ガイド(=Guide Shirt)」などのボタン付きフラップなどのスタイルがあります。これらもセキュリティのためにあり、貴重品をポケットに保管するのに役立ちます。
Pleated Pocket / プリーツ付きポケット
「スカウト(=Scout Shirt)」で採用されているスタイルで、何も入れていないときには胸にぴったりと寄り添い、必要なときには膨らむプリーツ(ひだ)状のポケットで、小さなギアを取り出しやす場所に格納することができるため、アウトドア愛好家にとても人気があります。
Matched Pocket / マッチ・ポケット
ボディのパターンにマッチするように縫い付けられるため、特にオープン・ポケットでは、その存在を感じさせないのが特徴です。
Bias-Cut Pocket / バイアスカット・ポケット
バイアスカットとは、ボディのパターンを引き立てるために生地を45度の角度でカットして縫い付ける手法で、「キャニオン」や「フロンティア(=Frontier Shirt)」など、多くのウェスタンスタイルのシャツにバイアスカット・ポケット(および切り返し)を採用しています。「オリジナルボードシャツ®」にもバイアスカットのフラップ・ポケットのバージョンをご用意しています。
Pattern Placement & Plaid Matching / パターンの配置とチェックのマッチング
お客様にとって重要なお知らせなのですが、<PENDLETON>では、ボタンフロント仕様のシャツのポケット、前立てとフロントパネルのチェック柄やパターンを合わせています。かつては、サイドシームでもチェック柄を合わせていましたが、見た目が素晴らしい反面、大量の生地の無駄と高コストを招いていたため、サステナビリティの観点から、この手法を廃止致しました。
01:わずかに丸みを帯びた裾のメンズ「サー・ペンドルトン」 02:ストレートヘム・スタイルのメンズ「オリジナルボードシャツ®」 03:ラウンドした高低差のある裾、メンズ「ロッジシャツ」 04:ストレートの高低差のある裾、ウィメンズ「クロップドボードシャツ(=Cropped Board Shirt)」 05:深くカーブした裾のウィメンズ「ボードシャツ」 06:ストレートヘムのメンズ「ボードシャツ」
Lesson 1,2,3:All about Hems
シャツの裾のスタイルを定量化するのは少し難しいのですが、若干丸みを帯びたものから、「ストレートヘム」、高低差がついた「ポロヘム」まで様々なスタイルがあり、“トレンド”と呼ばれるようなスタイルが次々と登場してきますが、ほとんどの場合が1800年代に確立したスタイルをリバイバルしたものです。
全般的に<PENDLETON>のウールシャツは、あまり誇張しない伝統的な少しカーブした裾が特徴ですが、メンズのコットンシャツには、より多くのスタイルが取り入れられています。女性用シャツでは、特に「ウィメンズボードシャツ」で採用されているような深くカーブしたシャツテールのスタイルが、かなりの好評を得ています。
多くのシャツ製品で様々な裾のスタイルを取り入れてきましたが、ひとつだけ変わらないスタイルがあります。「メンズオリジナルボードシャツ®」と「ウィメンズボーイフレンドボードシャツ」のストレートヘムは、時代を超えた定番スタイルとして、多くの人に愛され続けています。
To Tuck or Not
以前は男性の服装においてのルールは非常に明確でした。ラウンドした形状の裾はタックインする必要があり、ストレートヘムのシャツだけが、タックインせずに着用するのが適切とされていました。一方、女性は常にシャツをタックインするものとされてきました。しかしながら時代は変わり、1960年代以降はマナー的なルールも大きく変化しています。
細身のシャツや適度なラウンドのある裾のシャツは、タックインせずに着用してもマナー違反的な印象を与えることはなくなりました。また、テールにスタイルを感じるビッグサイズのシャツをタックインせずに着るのも、独自のファッションステートメントを表現する手段として定着しています。「オリジナルボードシャツ®」に関して言えば、ラウンドしたシャツテールもありますが、タックインすることなど誰も夢にも思わないでしょう。
「To Tuck or Not」。人の意見に左右されることはありません。あなたのシャツなのだから、あなたのスタイルで楽しみましょう!
定番の「オリジナルボードシャツ®」と、2024年に『A Century of Shirtmaiking』を記念して発表されたカプセルコレクション。